【No.139】 2004年8月6日号

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新手の電話セールスか?

 以前から薄々感じていたことですが、最近、新しいタイプの電話セールスが増えてきたように思います。その特徴は、「モノを売らないこと」。え? モノを売らない電話セールスって? そう思われる皆さんに、僕の想像を交えた、最近のからくりを説明してみたいと思います。

 まず、電話をかけてきたときに、「●●さんのお宅ですか?」とは言いません。名前は知らないままに、電話番号を片っ端からかけているのでしょう。これには、根拠があります。以前、1番違いの電話番号とファクス番号を持っていたのですが、会話用の電話が切れた後、数秒後に、今度はファクスが鳴る……そんな例がいくつかあったので、「なるほど、その方法があったのか」と気づいたわけです。電話帳への掲載をやめても、個人情報をできるだけ出さないようにしていても、防ぎようがありません。

 次に、かけてくる相手はおおむね(自称)不動産会社です。明らかに、マンションか何かを売ろうとしてかけてきた電話……のように装います。当然ながら、こちらは「関心ありません」と答えます。以前の電話セールスなら、たいてい、このへんで渋々諦めるわけですが、新手の電話セールスはここからが勝負です。何故なら、不動産の話題は、電話をかける口実に過ぎないから(たぶん)。

 大半の人間は、屋根のある住まいに住んでいます。住居に興味がない人間など、基本的にはいません。だから、そこにつけ込んで、あれこれと、こちらの家庭事情を聞き出そうとするのです(たぶん)。「関心ありません」と答えた僕に対して、例えば、「ああ、もうご自宅をお持ちなんですか」と聞いてくるわけです。「いいえ」と答えると、「では、賃貸にお住まいなんですね」。そして「ちょっと今、仕事中ですので」と答えると、「自宅でお仕事なさっているのですか」……。

 勘の鋭い人ならお気づきでしょうが、要するに相手は、僕の電話番号に対して詳細なプロフィール情報という付加価値をつけ、これを顧客リスト会社などに転売するか、再び自社で使おうということなのでしょう(たぶん)。名簿業者自らが、付加価値のあるリストを作成するためにかけてきている可能性もあります。そうでなければ、明らかに邪魔くさそうに応対している僕に、食い下がる理由などありません。そりゃそうでしょう、だって、マンションを売るのが目的じゃないんだもの。電話に出た僕から、一言でも、プロフィール情報を引き出そうとするのがねらいなのですから(たぶん)。

 例えば、以下のような会話が交わされたとしましょう。(=セールス)

「お近くに新しいタイプのマンションが完成しましたので、そのご案内をさせていただきたく……」
A「マンションには関心がありませんので」
「あーそうですか。もうご自宅をお持ちでらっしゃいましたか」
A「いや、そういうわけではないのですが」
「賃貸でらっしゃるのですか」
A「ええ、まあ……」
「でしたら、今は地価も下がっておりますので、非常にお買い得の時期かと思いますが」
A「そんなお金はありませんので」
「今すぐということではなくてですね、将来収入が増えたり、貯金も溜まって来られたときにですね」
A「もう増えませんから」
「これは失礼しました、もう定年退職でらっしゃるのですね」
A「いや、そういうわけではないですが……もう結構ですので」
「ご高齢の方に住みやすい小さな間取りのタイプもご用意させていただいておりますので」

A「私一人ですから、もうそういうのは結構です」
「そうでらっしゃいましたか……」

 さてさて、これだけ会話がなされれば、声のトーンなどから類推して「60代前後の一人暮らし女性」であることがわかります。高額商品は無理でも、怪しい健康食品など、いくつかの顧客リストに名を連ねそうですね。

 また、自宅を持っていて、老夫婦だけで住んでいることがわかれば、これは相当オイシイ顧客リストになります。屋根の点検サービスを実施しておりますと持ちかけて訪問し、「今すぐ修理しないと家がダメになってしまう」と契約を迫るとか……。老夫婦は自分で屋根に登れませんから、高い確率でだまされるでしょう。このようにして集められた顧客リストが、「お年寄り向けの次々販売の被害」に繋がっているのではないか、というのが僕の邪推です。

 このような「モノを売らない」電話セールスは、僕の印象としては数年前から始まったように思います。こちらは、マンションなどにいかに興味がないか、面倒な電話を早く切ってもらえるように、あれやこれやと、理由を言うわけですが、喋れば喋るほど、濃厚なプロフィール情報が集められるという寸法です。新手の電話セールスではないかと感づいてから、僕は「一切、何も答えません」で通しています。本当に、何も言いません。さすがに、向こうも諦めて切ります。

 そういえば、最近この類の電話がかかってくる前に、間違い電話が何度かありました。毎回、間違う名前は異なっていて、事務的に切る点は共通していました。あれは、この電話番号が生きているのか、在宅率の高い電話番号かどうかを確認する、前さばきの電話セールスだったかもしれません。考え過ぎかもしれませんが、僕が電話セールス業者なら、セールスに不慣れな人間は前さばきの電話部隊に使って、経験と度胸を積ませようと考えるでしょう。

 蛇足ですが、電話セールスに対抗するために、全く異なるプロフィールを演じて遊んでやろうかと時々思うのですが、巧くいかないものです。突然の電話で、咄嗟に別人物になり切るのは、なかなか至難の業。例えば多重債務者を演じた後に、どんなセールスが来るのか。片言日本語をしゃべったら、どうなるのか……。興味津々ではあります。

関連リンク●こわいこわい、電話セールスのお話 」(当連載コラムの2000年10月1日号)

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