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【No.141】 2004年11月25日号
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「殺るか、殺られるか」に潜む危うさ 欧米人はYes・Noを明快に示す。それに対して日本人はYes・Noをハッキリ言わない。だから日本人はダメなのだ……そんな話を、昔、イヤと言うほど聞かされた覚えがあります。書籍『「NO」と言える日本』(盛田昭夫・石原慎太郎の共著)が話題になった1989年頃か、そのちょっと前のことだったでしょうか。 「角が立つ」ことを嫌い、どっちつかずの「玉虫色」の決着を好む日本人の精神構造がどのように成り立ってきたのか。たぶん、日本の自然環境と密接な関わりがあるのでしょうが、そのあたりの分析は社会史や文化人類学系の先生にお任せするとして……最近の諸外国との対応の仕方を見るにつけ、「角が立つ」ことを避けて「玉虫色」の決着を求めることも、戦略的には時に必要ではないかと思うことがあります。 アメリカでは歴代最低の大統領ではないかと思うブッシュ大統領がよく使うロジックは、「独裁者を野放しにするのか、独裁者を葬るのか」、「テロに屈服するのか、テロを撲滅するのか」という分かりやすい二分法を持ち出し、「独裁者を葬る」「テロを撲滅する」ことの正当性を過大に主張するというやり方です。 そして、大量破壊兵器を持っている(と思い込んでいた)政権=フセイン政権を倒すために戦争を仕掛ける、テロリストが潜伏している(可能性があった)町=ファルージャを丸ごと破壊して罪もない市民も巻き添えに殺戮してしまう……。フセイン政権を倒したとき、ブッシュは言いました。「もう独裁者はいない。イラクは平和な国になった」……これは悪い冗談としか思えません。まるで、三流アメリカンコミックのヒーロー気取りです。 悪い冗談を繰り返すブッシュ大統領に全面支持の姿勢を貫いている日本の首相も、実に情けないですね。こんな時こそ、戦争好きなアメリカを支持するような支持しないような、「玉虫色」の日本人根性を戦略的に発揮してもらいたいものです。 日本にとっては、隣国の北朝鮮問題が身近な話題かもしれません。北朝鮮は確かに、とんでもない国でしょう。早く今の体制が崩れればいいと思いますが、「今すぐ経済制裁を」とか「日朝国交正常化交渉を打ち切れ」といった、早まった意見には首を傾げてしまいます。亡命者が相次ぐなど、北朝鮮は内側から少しずつほころび始めているはず。崩壊へのプロセスをたどりつつある今の北朝鮮を一気に追い詰めたら、それこそ何をしでかすかわからない、と思うのですが。 ここからは、とある学者先生からの受け売りもありますが、まあ聞いてください。過剰に相手を敵化した議論は好みませんが、仮に、追い込まれた北朝鮮が苦し紛れに日本に向けてミサイルを発射したとしましょうか。たぶん、日本に駐留しているアメリカ軍がすぐに動くでしょう。韓国も渋々ながら参戦するでしょう。北朝鮮は、イラクよりも脆(もろ)いと思います。たぶん、アッと言う間に征圧されると思う。でも、問題はその後。急激な社会変化に伴って、大量の難民が中国や韓国へ短期間に押し寄せる。中国あたりは、国境を封鎖するかもしれません。近い距離にある日本にも、相応の受け入れが求められるでしょう。 経済制裁がどの程度の強いインパクトを与えるのかは、よくわかりませんが、インパクトの与え方は強からず弱からず、玉虫色の頃合いが肝要だという気がします。国交というパイプを通して小さな穴を開けながら、徐々に資本主義経済、自由主義社会のエッセンスを少しずつ送り込み、徐々に穴を大きくしていく。北朝鮮が自ら体制を変えざるを得ないような、あるいは政権転覆が起きるような状況に追い込んで、ソフトランディングをさせていく……。じれったいけど、すぐにリセットボタンを押さずに、辛抱強くゲームが終わるのを待つしかないように思えます。 「今すぐ経済制裁を」「日朝国交正常化交渉を打ち切れ」といった意見は、拉致の問題が解決に向かわないことが引き金になっています。日本が毅然とした態度に出ても、現政権が続く限り、真相は出てこないでしょう。ただ、ここ最近の社会主義体制が崩壊した国々を見てもそうですが、いずれは必ず真相が明らかになる。そうだったのか、と驚くような話が一杯出てくる。それが3年後なのか、30年後なのかわかりませんが、少なくとも30年もあれば十分ではないかと、個人的には思っています。もちろん、「そんなに待てない」と訴えるであろう被害者やご家族のことを思えば、とても心は痛みますが。 食糧支援は、たぶん必要なのでしょう。ただし、どこまで食糧が届いているのか、キチンとトレースすることも重要です。食糧支援は、閉じた国に暮らしている国民とのコミュニケーション機会につながる可能性があります。もちろん、トレースができないなら食糧支援はしないという姿勢も必要でしょう。国を牛耳っている政権を牽制することと、その下で日々を営んでいる国民に手を差し伸べることは別問題。それをごっちゃにして「北朝鮮を許すのか、許さないのか」といった分かりやすい議論が持ち出されるところに、違和感があります。この日本に、ブッシュ式のロジックを持ち込むと、取り返しのつかない事態になりかねません。 さて、アメリカとイスラム国家とのギクシャクした関係の根底には、宗教戦争といった色合いもあります。どうも排他的で原理主義的な考え方というのは、よくないですね。その点、日本は一般的に無宗教……というより多宗教。お天道様やご先祖様、時にはお狐様やお狸様に人生相談をしたり、願をかけたりする。クリスマスのキャンドルサービスを見に行った一週間後には、神社へ初詣に出かけ、その数日後にはお墓を置いているお寺の法要を営み、次の日はカルチャースクールでインド風のメディテーションを習ったり……この無茶苦茶さが、僕はとても微笑ましく思えます。 これを日本のダメなところと見るか、良いところと見るか。僕はもう少し「角を立てずに」「玉虫色で済ませる」「節操のないところ」に良さもあると自信を持っていいと思うのですが。 そういえば、僕の実家では物心付いた時から「左より」とされる朝日新聞をとり続けていましたが、休日には日の丸を揚げたり、皇室の話題に親しんだりと、実に多様な(苦笑)価値観のもとで育ってきた気がします。あんまり右だの左だのも意識していなかったし、選挙の投票でも人物本位で選ぼうとしてきたし。このあたりが、ちょうどいい頃合いじゃないですかねえ。 関連リンク(お薦めwebページ) ●「テロ戦争のずさんさの裏にあるもの」(「田中宇の国際ニュース解説」より) |
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