●取材ノートから●(02) 2000年7月1日号

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2002年発行分

携帯電話は選べない?

 前回は、今の携帯電話業界で、NTTドコモやJ-PHONEなどの通信事業者が業界の中枢部を握っていて、メーカーは納入業者の一つに過ぎないことについて説明しました。また、通信事業者が「回線サービス」と「機器販売」をセットで手がけている日本方式はかなり珍しいとも指摘しました。何もかもグローバルスタンダードになるべき、とは思いませんが、この日本方式は消費者の選択の自由を奪いかねない構造をつくっているともいえます。

 フィンランドからやってきたノキアで聞いた話ですが、日本以外の多くの国で採用されているGSM方式の携帯電話では、好きな機器を選んで、そこに回線会社との通信をつかさどるチップみたいなものを入れれば、携帯電話が使えるとのことでした。取材しながら、へえ、と驚きました。つまり、一人で複数台数の携帯電話機器をもち、今日は都会っぽいのメタリックなこっちを使おう、今日はワインレッドのヤツでドレッシーに決めよう、といった選択ができるわけですね。しかも電話番号は同じで済む。

 もう10年以上前だったか、時計メーカーが「時計も着替えましょう」というキャンペーンをやったことがありますが、ちょうどそんな感じですね。機器1台ずつに電話番号が割り当てられている日本ではこんなことできません。

 もちろんNTTドコモなど通信事業者には商品ラインアップがいろいろ揃っていて、カタログを見て選べることは選べます。でも、何となく同じ感じのデザインが多いなあ、と思いませんか。とくにPHSのカタログなんか見ると、本当に何処が違うのやら、さっぱりわかりません。

 これには理由があります。通信事業者とメーカーの間で、次に生産する機器を事前に決めますよね。この段階で、各メーカーが生産することになる機種はせいぜい数機種なんです。詳しい事情はわかりませんが、市場に商品を流す通信事業者にとっては商品ラインアップが少ない方が流通面で効率的だし、メーカーにとっても機種を絞って大量生産した方が生産ラインの効率がいい。両方にメリットがあるんです。

 1メーカーあたりの生産機種が少ないということは、当然、どの機種も売れやすいタイプの商品に絞られます。細分化されたターゲット向けの商品は、まずありえない。ということで、結果的に、どのメーカーも同じようなコンセプトの同じような商品を生産することになっちゃって、カタログにして並べると「似たり寄ったり」になるというワケです。

 もちろん、通信事業者によって程度の差はあります。J-PHONEなんかは、デザイン的に個性豊かな機種がいろいろあって、選ぶ楽しさがありますね。納入メーカーの数が多いから、お互いに個性を出そうと競っているのかもしれません。NTTドコモでは高齢者を意識した簡単操作の機種も売り出しました(らくらくホン、デジタル・ムーバP601es)。いい試みですが、こういう、ターゲットをきっちり絞った大人向けの商品がもっとほしい気がします。僕の個人的な趣味では、J-PHONEのノキアのデザインがお気に入りです。これを使ってi-モードのサービスが使えるといいんですが、そりゃ無理な話。

 回線サービスがいろいろあるのは、競争社会にとっていいことだとは思いますが、複数の回線サービスがあるが故に、結果的に消費者の選択が狭まっているのも事実です。消費者が選ぶ前に、通信事業者がメーカーとの間で商品を選んでしまっているのも気になります。回線サービスも携帯電話機器も自由に選べて、「携帯電話も着替えられる」日は来るのでしょうか。

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