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●取材ノートから●(11) 2001年4月1日号
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タテ割り医療・ヨコ串医療 『迷ったときの医者選び』について取材のエピソードを綴ってきましたが、主に担当した皮膚科以外では熱傷治療の分野でも一部を受け持ちました。 例えば火事や事故などで大きな熱傷を負った場合、まずは救命を目的とした急性期治療が行われます。熱傷の深さにもよりますが、ある程度の面積に熱傷が広がれば生命が危ういわけですから、何よりも命をとりとめることが優先です。生存率が高い病院というのがあって、それはそれで医療機関の名誉ではある。「あそこに連れていけば、命が助かる」という評判も上がります。ところが、命が助かれば、患者は辛うじて踏みとどまった現世で、これからの人生を生きていかねばなりません。 形成外科のI医師がこんなことを言っていました。 「全身熱傷を負った患者さんを診るのは、大半が救命の先生です。確かに彼らは命を救うのは巧いかもしれない。けれど、急性期は過ぎたものの手や首が動かせなくなっていたとなれば、本当の意味で助けたと言えるのか。手にしても首にしても、熱傷後2週間放置しておいたら、もう固まってしまうんです。だから、まだ救命に専念している早い段階から、形成の治療も部分的に進める必要があるわけです」 固まってしまうというのは、難しい言葉でいえば「こうしゅく」ですが、要するに皮膚表面がひきつれた、突っ張った感じになってしまうということ。たんに皮膚が動かなくなるだけでなく、その突っ張りが時には骨まで変形させてしまうそう。だから、受傷後早い段階から必要に応じて部分的に皮膚移植を始めるなど、後々のリハビリまでを想定した治療を始める必要があるわけです。顔の熱傷の場合も、受傷直後は元の顔の名残をとどめているので、名残があるうちに早めに皮膚移植などを進めていくことが大切とのこと。I医師からは、生々しい写真が載った論文を見せて貰いましたが、いやはや、いやはや、大変な仕事です。 気になったのは、二度と外に出たくないと本人が思ってしまうような傷跡が残った患者さんの、社会復帰です。I医師は、カツラの使用を薦めたり、重度の傷跡には植毛をしたり、傷跡をカバーするメイクを専門的に手がけている機関を紹介するなど、医療の垣根を時には超えてしまうような部分までフォローをしています。これって、凄く大切だと思う。でも、ここまでやる医師が、いったい何%いるのでしょう。 「救命から形成治療、リハビリ、場合によっては心のケアまで、総合的に患者さんを診られる熱傷センターのような存在が日本にも必要です。アメリカには既にあるんですが……」 ここでは熱傷治療の話に終始しましたが、脳卒中など脳血管性疾患の治療でも同様の問題があると聞きました。リハビリ専門病院に送り出す時期があまりに遅すぎ、命は助かっても二次障害で苦しむケースが多いとのこと。 「命は助けたから後はリハビリで元通りに戻してもらいなさいと言って、送り出してくる医師がいる。冗談じゃない、患者の社会復帰を本当に考えるなら、どうしてもっと早くリハビリを始めさせてあげないのか。命を救えば自分たちの仕事は全うしたと思うのが間違いです」と怒っていたのは、とあるリハビリ病院の、元院長でした。 どうしてこうもタテ割りのぶつ切れなんでしょう。消費者向けの商品を売っている一般企業なら、セクションの垣根を飛び越えてこそよりよい商品が生まれることを周知しているわけですが、医療の世界はこの点であまりに遅れている。個人的に医療機関と関わりが多くなった自分自身の体験と照らし合わせても、タテ割り医療の弊害を痛切に感じます。 次回は、ちょっぴり胡散臭いレーザー治療のお話です。 |
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