●onfieldレポート●(04) 2002年7月1日号

2000-01発行分

2002年発行分

沖縄に魅せられて

 6月末、梅雨寒の東京を後にし、真新しい夏に突入したばかりの沖縄を旅してきました。

 沖縄は、今、ちょっとしたブームになっている気がします。きっかけになったのは、SPEEDや安室奈美恵さんといった沖縄出身アイドルたちでしょう。彼女たちが頭角を現し始めた95〜6年頃の時点では、類い希な才能をもったタレントさんの出自がたまたま沖縄に集中していた、という印象もあり、沖縄色を表に出したが故に売れたわけではありませんでした。

 でも、99年に公開された映画『ナビィの恋』が細々ながらヒットし、これに出演していた「おばあ」こと平良とみさんが出演したNHKの朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』(01年4月〜9月放映)が話題になり、最近では元ちとせさんが大ブレイクしたあたりから、「どことなく、異質感がある沖縄に興味津々」な空気が生まれてきているように思います。

 学生運動の洗礼をぎりぎりで浴びることがなかった40代半ばの僕にとって、今までは、沖縄について非常に構えたかたちでしか接点がもてませんでした。世の中への関心が芽生え始めた思春期の頃、年代でいえば1972年に沖縄は本土に復帰したわけですが、沖縄を語るなら、日米安保条約について語らなければならない、先の大戦における沖縄地上戦の悲劇について考えを巡らさなければならない、といった無言の圧力のようなものを僕は感じていました。「思い過ごしだ」と言う人もいるかもしれませんが、同じ年代の方なら共感してくれる人もいるのではないでしょうか。

 時間の経過というものは不思議なもので、今は「沖縄を語る」「沖縄に関心を持つ」接点が実に多様になってきた気がします。音楽や映画から入ってもいいし、食べ物やお酒から入ってもいい。社会派の人なら、これまで通り安保問題や平和運動から入ってもいいし、エコロジーや人口問題から入ってもいい。70年代なら、沖縄出身のロックバンド「紫」を入り口に関心を持つなんて邪道派だったでしょうが、今はミーハー気分のままで大衆文化っぽいところから沖縄を覗けるようないい時代になってきたなあ、と思います。

 初めて足で歩いた沖縄は、確かに魅力的でした。とくに食べ物や音楽、自然の動植物は、文化や気候を異にする地域ならではで、物見遊山の観光客としては、五感で感じることすべてが新鮮に見えました。その一方で、いくつかの「肌触りのある記憶」も刻んでいます。

 一つはやはり米軍の存在です。ガイドブックによれば、米軍基地は面積比で10%あまりだそうですが、印象におけるシェアとしては25%以上はあるような気がします。至る所で、YやTなどのアルファベットナンバーを掲げた車が走っていますし、米兵やその家族相手の看板を掲げる店も少なくない。とくに嘉手納基地の沖合で体感した戦闘機の恐怖は、一生忘れることができません。また、何の期待もせずに立ち寄った首里城では、知っているようで実はなあんにも知らなかった琉球王国の歴史や風俗に、知的興味を大いに刺激されました。

 僕にとって、沖縄は「最後のご馳走」だという気がしています。 それには二つの意味があります。まず、僕の中には沖縄の血が流れているということ。このことを、最近、とても意識するようになってきました。もう一つには、全国47都道府県のうち、唯一降り立ったことがない県だったということ。正確には、昨年取材で初めて訪問はしたのですが、到着してすぐに取材先のオフィスへ行き、翌日は朝イチのフライトでとんぼ返りだったので、沖縄に降り立ったという実感が今ひとつもてなかったのです。

 とくに前者については、これから探求していく大きなテーマです。母方の祖父母が共に徳之島の出身で、長寿を全うして今は他界していますが、昔から親戚 が集まった時に出されていた食事、祖父母の自宅にあった小物、米寿のお祝いか何かで披露された琉球の踊りなどが断片的に記憶に残っています。当時は、そのような「沖縄的なもの」に全然関心をもてず、どちらかといえば目を背けていました。どうしてもっと、祖父母から徳之島のことを聞いておかなかったのかと、とても後悔しています。

 徳之島は、元ちとせの故郷である奄美大島と沖縄本島の間にある小さな島で、鹿児島県に属していますが、文化圏としては明らかに沖縄です。沖縄同様、戦後はアメリカの統治下におかれていた時代があり、沖縄よりも一足早く1953年に本土に復帰しています。今、細々と、両親の人生を聞き取る作業を始めていることもあって、沖縄には否が応でも関心が向きます。簡単にいえば「ルーツ探し」のようなものかもしれませんが。

 これからの日本を考えていく上でも、沖縄は格好の素材になる予感がします。沖縄は、全国でも人口増加率が2番目に高い県(1位はベッドタウン化している神奈川県)。出生率では頭一つリードして一位を続けていますし、「本土」から移り住む人も少なくないようです。経済状態がいいとは思えないのに、未来に希望が見えている地域でもあるわけで、そこにどんな秘密があるのか、興味は尽きません。また、アメリカとの関係を問い直したり、日本の中の多民族性や異文化性を考える上でも貴重な存在です。

 最近の、本土での沖縄文化の浸透について、「郷土文化の消費」を懸念する地元文化人もいるようですが、裾野広く沖縄への関心が広がっていくのはいい傾向。長期的な視点で見れば、沖縄海洋博や2000円札紙幣などの政府の思いつき振興策よりも、よっぽど沖縄のためになっていくのではないでしょうか。

関連リンク●「さて。」(今回の沖縄旅行、僕の物見遊山な旅行記はこちらで)
     
Okinawa On-line (作家の池澤夏樹さんが関わっている、沖縄関連サイト。沖縄への愛情が感じられます)

2003年発行分

BEFORE← →NEXT
当ホームページに掲載されている原稿の無許可転載・転用を禁止します。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。
Copyright 2002-2004 tomoyasu tateno. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.